かつてこの世界では機械技術に優れたハルカンドラの民と、魔法科学に優れた魔族(※ハイネスの一族)が共存し、数多の惑星で一大文明を築いていた。彼らは機械技術と魔法を併せた独自かつ優れた遺産を残した。ギャラクティック・ノヴァ、夢の泉とスターロッド、ディメンションミラー、心ある船ローア等は彼らの産物である。彼らは共に協力し合う良き隣人であったが、魔族がマスタークラウンを作った事で転機が訪れる。マスタークラウンは持ち主に絶大な魔力を与える道具だが、魔族が信仰する「闇の物質」の力が特に詰め込まれていた。闇の物質を信仰していない人間が使おうとすれば、その人間は力に飲まれて体を異形と変じさせる恐ろしい物だった。
ここで、ハルカンドラの民は隣人の力に恐怖を覚えた。我らが友だと思っていた彼らは、おぞましい神を信仰する、悪魔の一族なのではないか――?
以降、二つの一族の間の親交は徐々に綻びを見せ、お互いの力が強大で脅威になり得ると断じた彼らは戦争を始める事となる。魔族は超人的な魔導師であったゼロを、ハルカンドラ側は戦闘兵器ノヴァを筆頭とし、日々戦いは激化していった。
争いが続く中で、双方の一族は宇宙の秩序を乱す程の武力を持ち始めた。宇宙の調停者である星の戦士の一族も闇の物質の力を危惧してハルカンドラの民に力を貸し、魔族は大半が滅ぼされる事となり、殺しきれなかった者――ゼロを始めとする強大な魔導師達は封印処理をされる事となった。また、ハルカンドラ側の主力であった戦闘兵器ノヴァもその強大過ぎる力を理由に封印を施され、宇宙へと放流された。
双方の主力が共に封じられた事で戦は終わった。魔族、ハルカンドラ両陣営共に多くの人間が死んだ。また、戦争の影響で彼らが住んでいた栄華の都、ハルカンドラも火山が活性化して多くの物が溶岩の海へ溶けていった。そうして戦後、生き残った少数のハルカンドラの民達は新天地を求め、天翔ける船を操って宇宙へと旅立った。
ゼロは封印される際、報復として星の戦士の一族に呪いをかけた。それは何年も掛けて発動する緩やかな死の呪いであり、抵抗力や生命力を少しずつ削ぎ、やがて一族全てを断絶する種の呪いだった。その結果、星の戦士の一族もその数を減らし続ける事となった。
新天地を求めて宇宙を彷徨っていたハルカンドラの民は、ある時とある惑星を発見する。実り豊かな大地、美しい自然。彼らはこの惑星こそ自分達の理想郷たりえるのではと考えた。だが、先の戦争で疲弊しきった彼らは、そこに住まう原住民族に対して酷く懐疑的であった。――彼らは本当に我らの良き隣人となってくれるのか? その疑問が拭えなかった彼らは、そのままその惑星で暮らす事はせず、代わりに夢の泉という装置を置いた。
泉は人間の悪意や欲望を吸い上げる浄化機構であった。住民は寝る度に己の中の欲望全てを夢の中で果たし、苛立ちを忘れ、心の安寧を手にする事が出来る。そして、幾星霜の月日を経て、平和に慣れきった住民たちは闘争心を忘れて扱いやすい木偶となる。
――そうなった際に、我らは再びここへ戻ってこよう。ハルカンドラの叡智を宇宙にまた響かせよう。その日まで彼らの牙を抜く様に、と密に泉に管理者を置き、彼らはまた新たな資源地を求めて宇宙へ飛び立った。
その後、ハルカンドラの民は歴史からひっそりと消え、ポップスターに彼らが戻って来る事も無かった。彼らの技術や遺産はカービィ世界の至る場所に散らばり、今も影響を及ぼしている。また、現在魔族の伝承は一切残っていない。現存するハルカンドラの民が残した文献には、過去の文明は全てハルカンドラの民が一人で作り上げた物とされており、正しい歴史を知る者は極一部しか存在していない。
この二つの種族が織りなした歴史の後、カービィ達の物語へと繋がっていく。