マターズ周辺設定

本編ストーリー紹介。2・3・64。

 強大過ぎる力を持った為に星の戦士の一族に封印された古の魔導師、ゼロ。彼が封印間際に施した呪いの効果で、星の戦士の数は長い年月の間にじわじわと減っていた。その影響で封印の効力が弱まり、数千年ぶりに彼は意識を取り戻した。目覚めたゼロが最初に思ったのは、目が眩むほどの星の戦士への憎しみだった。彼らさえ介入して来なければ、我が一族は戦に勝利していた筈だ。だが、横槍を入れられた事で自分は封じられ、戦時共に肩を並べた同胞達は皆死んでしまった。

 ――仇を討たねば。 今は亡き戦友達もそれを望んでいる。弱まったとは言え、封印はまだ健在で彼の体を蝕んでいたが、そんな物はこの憎しみの前では些事に等しい。そうしてゼロは星の戦士を全て根絶やしにする為にミラクルマター、リアルダークマター(以下ミラ、リアル)という部下を創り、密かに動き始めたのだった。

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星のカービィ2

 一方、カービィ達は夢の泉の一件が終わり、また皆平和な生活を謳歌していた。そんな最中、プププランドにある虹の島々――常に虹がかかった幻想的な諸島の総称だ、から突如として虹が掻き消えるという珍妙な事件が起きた。この頃には数々の事件を解決しては強敵を打ち倒すカービィは皆に勇者としてすっかり信頼され、虹の島々に住む住民から原因の解明をして欲しいと直接助けを求められたのだった。困ってる人を放ってはおけない性質のカービィは、早速虹の島々に出向き調査を始めた。虹の島々の探索には、一早く異常に気が付いた三人の若者、リックとクー、カインと協力して進んでいった。

 島はどこも嫌な気配で満ちており、探索をしている最中に島の住民の一部はカービィの姿を認めた途端、何かに操られる様にして襲いかかってくる事さえあった。その原因は、島のあちこちに隠された虹の雫だった。元々は島の平和を守り、島を美しい虹で満たすそれは邪法によって黒く染まり、人々を狂わせたのだった。
 カービィ達が全ての島の虹の雫を探し当て浄化を進めていくと、最後の島でデデデ大王に邂逅する。彼は虹の雫を隠したのは自分だ、この雫の力で世界を征すると語った。大王はどこか夢うつつの様で時折意識を手放していた。それを訝しむカービィだったが、邪魔立てするなら容赦しないと大王が襲いかかって来た為やむなく戦う事となった。
 大王を倒した後、突如集めた虹の雫が合わさり剣となった。大王が剣の光を浴びると彼から剥がれる様にして一人の青年が姿を現した。ダークマターのリアルと名乗ったその青年は、カービィを見るや剣を向けた。
「その瞳の星……お前が星の戦士か」
 混乱するカービィにリアルは容赦無く攻撃を繰り出した。細身の体躯からは想像を絶する程の力で剣を振るうリアルの技に苦戦を強いられるが、意識を取り戻したデデデの助力もあり、彼を斬り伏せる事に成功する。
 その後、虹の剣は雫の形に戻り再び島々を鮮やかな虹で満たす様になった。結局、リアルの目的は何だったのか。はっきりしなかったものの、事件は解決した。何処か嫌な予感を感じつつもカービィは日常へ戻ったのだった。

 ゼロは星の戦士を殺すにあたり、まず星の戦士の特定をすべきと考えた。ポップスターにいるらしき事は魔法で絞り込んだが、更にそこから見つけ出す為に、彼はリアルを使ってわざと事件を起こさせた。星の戦士であれば、何か異変を起こせば必ず食い付くだろう、と。その読みが当たり、事実カービィは事件解決に乗り出した。
 リアルはゼロがいる限り無限に蘇られる戦闘用ダークマターだった。カービィとの戦闘後、ゼロはリアルの死体を回収し蘇生させた。蘇った彼がゼロにカービィという少年が星の戦士であると伝えると、ゼロはとうとう本格的にポップスターへ侵略を開始した。彼は惑星全域を覆う瘴気を呼び寄せた。それはポップスターの住民の正気を奪って互いに殺し合わせる物で、戦で同胞を亡くした彼の復讐であった。

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星のカービィ3

 ゼロの魔の手が忍び寄りつつある頃、カービィの元に一人の少年が訪れた。グーイと名乗るその少年は、過去の戦争、星の戦士、封印されたゼロという男の存在をカービィに教えた。いきなり語られた話の数々に目を丸くしていたカービィだったが、突如ポップスターの空に暗雲が立ち込め、瞬く間に空が闇に染まっていった。黒い雲は人々の体内に入り込み、彼らの心は闇に蝕まれた。人々から向けられる凶刃を交わしながら、一刻の猶予もないと二人はゼロを倒す為に旅立つのだった。

 ポップスターの住民の中でも、抵抗力や意志が強い一部の者は自我を保っていた。頼れる仲間、リック達の助力を得ながら最も暗雲が立ち込めていたデデデ城に彼らは向かった。
 デデデ大王もやはり心を支配されており、体も一部闇と同化してしまっていた。大王は何とか倒した物の、異形と化した姿は元に戻らなかった。彼を助ける術は無いのかと悲嘆にくれていると、このプププランドに住む人々の心の力が合わさり一本の杖となった。そこから発せられる光が周囲を優しく包んだかと思えば、ポップスターに立ち込めていた黒い暗雲は浄化されていき、人々は正気を取り戻し、大王も無事元の姿へ戻る事となった。
 だが、これで戦いは終わりでは無い。闇の力はポップスターの中心に集まり未だ脈動し、ハイパーゾーンと言う闇の世界を生成していた。
 その決戦の場にカービィとグーイが向かうと、一人の男が立っていた。その男こそが、ゼロだった。
「……お前自体に恨みは無い。だが、お前の一族が成した事だ。同胞達の無念、お前の死で以て晴らさせて貰う」
 そうしてゼロは杖をカービィに向け、死闘が始まった。圧倒的な魔力と戦闘センスにカービィ達は重傷を負うが、グーイはゼロの力をトレースして一時的に大魔術を操り、カービィも彼の決して諦めない勇者の心がゼロの封印を再び呼び起こし、彼の動きを止めた。その絶好の機を逃さず、彼らはゼロを殺す事に成功する。
 その後、ハイパーゾーンは消えポップスターに平和が訪れた。グーイはゼロの力を無理に模倣した事で能力を失い、カービィの助力は出来なくなったものの、戦友となった二人の友情は絶えず続いていくのだった。

 戦闘は頭数が重要だ。一騎討ち等馬鹿らしい。それを誰より承知していながら、ゼロは共に戦うと言うミラとリアルを連れて行かなかった。動ける様になってからずっと仇討と憎しみに駆られていたゼロだったが、僅かな間とは言え己を信じ慕うミラとリアルに彼の心は動かされた。自分のエゴに彼らを付き合わせる事は無い。そう思った彼はカービィと戦う直前に二人を結界に閉じ込め、自由に生きるよう命を下し単身カービィの元へ向かった。ここで自分は死ぬかもしれないと何処か予感もあったのだ。
 そうしてゼロは彼の予感通り死んだのだが、その死を許せなかった男がいた。その男――ミラは敬愛するゼロの死に耐えられず、ゼロの亡骸を使ってもう一度彼を創ろうと禁呪に手を伸ばす。彼はその禁呪を何とか成功させたが、産み出されたゼロツーは彼の望んだ主では無かった。
 少年の姿である事はまだいい。ミラが何より辛かったのはツーがゼロだった頃の記憶を何一つ覚えていない事であった。ミラはその後、ツーにゼロの様に振る舞う事を強制した。日が経てばゼロの記憶を取り戻すかもしれないと思ったがツーがそれを思い出す事はなかった。また、リアルはゼロの死後明らかに精神に異常をきたし始めたミラと、ミラの苛烈な教育に疲弊するツー、どちらも放って置けずに支えになる様動いていた。

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星のカービィ64

 そして、彼らは強大な魔力を秘めた魔水晶クリスタルの事を知る。それがあれば、ツーもゼロだった頃の記憶を取り戻すかもしれない。そんな一縷の望みを賭けて、ミラとリアルの二人はリップルスターに乗り込んで女王を殺害しクリスタルを奪おうとした。だが女王の一人娘たる姫と付き人の妖精リボンが先んじてクリスタルを持ち出し、他の惑星に助けを求めようとした。
 その最中、時間稼ぎを試みた姫は石像に変えられてしまう。姫にクリスタルを託されて宇宙を必死に逃げるリボンはクリスタルにこう願った。
「あいつらを倒せる様な強い人の所に運んで、クリスタル――!」
 願いを聞き遂げたクリスタルはポップスター、カービィの元へと向かい始めたが、ミラ達の追撃を食らってクリスタルは砕け散ってしまう。だが、リボンはそのままカービィの元へ運良く辿り着き、カービィに涙を流しながら助けを求め、カービィはその手を取った。そこから彼らの物語が始まるのだった。

 一方、クリスタルが砕け散り当初の目的は果たせなかったミラは、その直後体に異常を感じ、一度帰還した。
 カービィとリボンが繋がったと知り、妨害にダークリムラ達尖兵を送った直後、ミラは意識を失った。ゼロの死による精神的なダメージと禁呪の行使で彼の魂は限界を迎え壊れたのだった。次の日から、彼はゼロが死んだ事を忘れてツーがゼロであると誤認し始める。ツーを見てゼロが生きていた頃の様に明朗に笑ったかと思えば、ツーがゼロらしからぬ行動をすれば突然彼を殴り、詰った。リアルは彼を元に戻そうと言葉を尽くし奮闘したが、一度壊れた物はどうする事も出来なかった。

 カービィはダークリムラ達を倒し、ワドルディ、アド、デデデ大王と事情知り協力を申し出た仲間達と旅を進めていった。一刻も早くリップルスターに向かいたいリボンだったが、宇宙に星間移動を阻害する術式が展開していた為に惑星に散らばったクリスタルの欠片の力で短距離での移動を繰り返し、ようやく彼らはリップルスターに辿りついた。
 リップルスターの空には暗雲が立ち込めており、心を支配された住民達はカービィ達へ襲いかかってきた。彼らを躱し時に気絶させながら、カービィ達は王城へと向かった。玉座の間に入ると空間が歪み、闇に囲われたフィールドに変わった。その中央には二人の男、ミラとリアルがカービィ達を待っていた。――カービィ達がリップルスターに辿り着いた時、ミラとリアルはツーをファイナルスターに残して打って出る事にした。ツーは一緒に戦うと言ったが、彼らは今度こそ自分達が主を守る番だと決意を固めており、帰りを待っていて下さいとツーに笑いかけ、戦いの場へ赴いたのだった。
「お前……ッよくも、よくもォオオ!」
 ゼロが死んだ記憶は失ったままカービィに対する憎悪だけを思い出し、ミラはカービィを殺すべく襲いかかった。そんなカービィの助けに入ろうとしたデデデ大王はリアルによって止められてしまう。
「助力はさせん。お前の相手は私だ」
「ほお。調度良い、先日の礼をしてやりたいと思ってたんでな!」
 そう互いに言い放ち、彼らもまた死闘を繰り広げるのだった。攻撃が通らない防壁を貼り一方的に戦いを展開するミラだったが、窮地で結界の穴に気が付いたカービィに己の呪文を逆に利用されて致命傷を負い、吐血して倒れ伏した。そこで彼は漸くゼロの死を思い出し、ゼロの最期の願いを無為にし、ツーに酷い事をした自分を後悔しながら死ぬ。ミラが死んだ事で隙を作ってしまったリアルも致死の一撃を受け、彼もまた結局誰も救えなかった己の無力さを嘆きながら物言わぬ屍となった。

 その後、リップルスターは悪い魔法が解けていくかの様に暗雲が晴れていき、姫も石像から元の姿に戻りリボンとの再会を泣いて喜んだ。そんな光景を見て事件解決を祝う一同だったが、突如リボンが持っていたクリスタルが光り輝き、姫の胸を貫いた。そこから溢れ出た闇はマターズの本拠地であるファイナルスターを指し示し、戦いはまだ終わっていないようだとそこへ足を向けるのだった。

 ミラとリアルの帰りをずっと待っていたツーは、彼らの代わりにカービィがここに足を踏み入れた事でミラ達の死を察し、絶望する。
 ――殴られ詰られた事もあったが、ツーにとってミラとリアルは確かに家族だった。そんな彼らを殺害したカービィにツーは血の涙を流しながらカービィを殺そうと襲いかかった。そして、クリスタルの力を引き出したリボンの助力もあり、カービィは戦いの果てにツーを討つのだった。

 そして一連の事件は終結した。カービィは後味の悪さを感じつつ、心も体ももっと強くならなければ、と決意を固めるのだった。


【設定補足】リアルの身体:ゼロが居る限り死んでも蘇生出来る特性持ち。生命をゼロに依存していた為か、ゼロの死後は存在が不安定になったもののミラが呪法を施し存在を安定させていた。だがミラも彼の不死性を維持する程の力量はなく、ゼロ死後はリアルの不死性は失われている。